早朝の惨劇……弱肉強食の世界
朝の散歩の途中、森の中のアオキの茂みでカサリと音がした。いわゆる何かのの気配である。姿勢を低くして覗き込むと、黒っぽい動物が走っていった。猫か?はたまたタヌキ?いずれにしてもそれは獣に見えたのだが。 そこに、ビーグル犬ハッチくんの排泄物を拾っていた連れ合いが遅れて到着。「なにかがいたよ。向こうに走っていった」と報告すると、一緒に探していた。彼女が「あっ!」と言った。大きな鳥がなにかを抱え込んでいて、一瞬目が合った。するとその鳥は抱えた獲物を話して飛び去ったのだという。お腹の白い鳥だったというから、オオタカだろう。現場の方向を見ると、たしかに黒いものが横たわっている。近づくとそれはカラスで、すでに事切れていた。 つまり、オオタカがカラスを襲った現場に居合わせたことになるわけだ。オオタカは鳩ほどの大きさの猛禽類だが、カラスも襲うし、もっと大きなカモやキジを襲うこともあるらしい。 数年前に、路上にカラスの羽根が散乱していたことがある。オオタカがカラスを狩り、食べるために羽根をむしった跡と思われた。それまで我が物顔に森を暴れまわっていたカラスの群れが、その後いなくなってしまった。噂がひろがって移動してしまったのかもしれない。
すると、ぼくが最初に見た生き物は、逃げようとしたカラスなのか?それとも獲物に忍び寄ったオオタカ? いやいや、確かに獣に見えたし、地上を走っていったぞ。鳥と獣を見間違えるほどモーロクはしていないつもりだが。 じゃあ、あれは一体何だったのだろう?
きっと、オオタカがカラスを捕らえた瞬間に居合わせた猫、あるいはタヌキかキツネかが、漁夫の利をあげようとして忍び寄ろうとしていたのだろう。そうとしか思えない。 「ダーウィンが来た!」ではないが、森で繰り広げられている弱肉強食の世界を象徴する出来事だった……。 でもね、ふだんカラスは戦闘モードに入っていない猛禽類を見つけると、しつこく追い回して嫌がらせをするのは、ご存知の通りなのです。そんなときは、つい心の中で猛禽類を叱咤激励してしまいます。
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