本物のモンスターのいる森でバーチャルなモンスター狩り?
散歩する森に小さなログハウスが建っている。酒田が誇る黒松の森は、江戸時代の豪商、本間光丘などが、海からの塩害や雪、強風から町を守るために苦労して植えたもので、ここから「公益学」も生まれたのだそうだ。ログハウスは、森を愛するボランティアの人たちが、森を愛するさらに多くの人たちのために開かれた憩いの場なのだそうだ。近くには市が管理する炊事場もあり、芋煮会などに利用されている。 実はこの夏あたりから、ここで妙なことが起きている。時々、早朝(6時台)に数台の車が停められ、若い人たち(多くは男性だが、女性も混じっていることも)が小屋の周辺に突っ立っているのだ。みんなスマホを掲げている。どうやらここにポケモンが出現するらしいのだ。例のゲームである。希少なモンスターなのだろうか、彼らはポケモンハンターなのか? そうとわかると、昼間、自転車でふらりとやって来る人もいれば、放課後、近くの高校から部活を抜けだしてくる生徒もいて、彼らもハンターらしいのだ。早朝の生き残りを探しているのだろうか? 人に聞くと、モンスターはいつもいるわけではなく、日時限定なのだそうだ。そういえば、夜の中町通り(町の中心部だが、シャッター街)に、人がおおぜいうごめいているのも見た。暗闇にうごめく人の群れは、彼らこそモンスター、魑魅魍魎に見えたものだ。
このゲームが公開されたとき、これでオタクやひきこもりが屋外に出て、アウトドアの魅力に開眼するだろうなどと解説した「有識者」がいたが、これがそうなのだろうか? だとしたら、仲間同士で誘い合って来た人は別にして、互いに会話を交わすわけではないし、さっさと仕事に行ってしまって、流れ解散で終わり、だれもスマホ画面の他は見てやしない。
この森には本物のモンスターがいるのに。昆虫たち、哺乳類や鳥類の小動物たち。一つ一つが姿も行動も面白く、不思議に満ちているのに。残念だなあ!
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