以前暮らしていた横浜の知人に「酒田では散歩でリスに会う」という話をしても、あまり関心をひかないどころかいやな顔をされることもあります。横浜ではリスといえば大きなタイワンリスのことで、彼らは樹木を枯らしてしまう害獣だったことを思いだすというわけです。そのタイワンリスは、リスには珍しく集団生活をするのだと、以前NHKの番組で知りました。
一方、今私たちが観察中のニホンリスは、なわばりを作って単独生活をすると言われています。しかし、東京の井の頭公園の自然文化園や、上野動物園のリス園では、たくさんのリスが仲良く暮らしているようです。
単独生活といえば、ライオン以外の野生のネコ科動物は単独生活をするのですが、イエネコだけは例外で、仲が良いのか悪いのか、緊張をはらんだ集団で暮らすケースもあるようです。横浜の戸塚区には「踊り場」という地名が残っていますが、もともとは「猫の踊り場」で、ネコが集会を開く場所だという言い伝えがあります。
さて、件のニホンリス、ホンドリスともいうのですが、散歩コースに何カ所か出会える場所があり、それぞれのなわばりなのだと推定できます。ところが一か所だけ、どうも複数のリスがいるのではないかと思う場所があります。1匹見つけたと思ってカメラを向けようとすると、別の個体が現れます。時には3匹以上が近くにいて追いかけ合うような行動をします。緊張も興奮もなく、ケンカではなく遊びなのだろうと推定できます。
3年ほど前の5月に、ここで子どものリスを見ました。子どもは春に数匹生まれ、5月の連休のころ、外出を許されるようです。木の上や以上で楽しそうに遊ぶ姿を見かけます。怖れを知らず、こちらに向かって走ってくることもあります。
「子どもたちはいずれ親離れして、親のなわばりから出て独立するのだろう」と思っていたのですが、いつまでも一緒に遊ぶ姿が見られます。数は減っているのかもしれません。独立した子がいるのか、猛禽類やキツネなどの餌食になったのか。しかし、3年以上過ぎてもまだ兄弟仲良く暮らしているのが、先述のリスたちです。これは、主食のクルミが豊富にあるからなのか、出てり国はエリアが狭すぎるからなのか、それともリスの生態が変わりつつあるのかは不明なのですが。(動物園で、仲良く集団で暮らせるのですから、不思議ではないのかもしれませんが。)
その兄弟リスが暮らしているのは、1匹の高齢の雄のなわばりです。この雄はヒゲが白いのですぐにわかります。なんだか子どもに優しいというゴリラの雄(背中が白いのでシルバーバックと呼ばれますよね。)を連想するので、ぼくは最近彼をビッグダディと呼び始めました。でも、子どもに頼られているわけではなく、高齢による衰えも感じるのですが。この冬は松やにかなにかで顔をべたべたに汚していたり、高い枝から落下したり、なにかピリッとせず頼りないのです。
兄弟リスの1匹
ビッグダディ