カラスとスズメにやさしい街?
今日も車で通りかかると、その店の前にはカラスが3羽いた。そのうちの2羽は大きくずんぐりしていて動作もごくゆっくり、、いかにも年寄りらしく見え、顔を寄せ合っている。 駅と浜の工場街を結ぶ大通り沿いにその店はある。昔は徒歩や自転車の通勤者、荷車やトラックが行き来する通りだっただろうが、今はすっかり寂れてしまっている。 店は写真屋で、デジタルカメラの普及でこれまた寂れている。しかし、年配の主人は「遺影を撮るならわが店で」と、自らホトケ姿(経帷子を着て、頭に三角の額烏帽子をつけ、手をだらりとして)のポスターを店頭に貼っている。 先年、気に入ったリスの写真が撮れたので、「A4ノビ」というサイズの額に入れて玄関に飾ろうと思った。しかし自前のプリンターではA4より大きなサイズではプリントできないので、この写真屋に持ち込んだ。すると、カメラ屋チェーンの店と違って翌日には仕上がるという。翌日受け取りに行って、森の動物の話で盛り上がった。 カラスも観察すると興味深いということを行ったら、「うちにもカラスが来るのでよくわかる」と言うのだった。それで、この店の前を通る時には、カラスがいるかどうか気にしていたのだった。 それでわかったのだが、この通りにはカラスに食べ物を与えているらしい家が他にもあるようだ。この通りをなわばりにするカラスは、その特権を手放したくない。食べ物には不自由しないので大きく力強く、しかも長生きするのではないだろうか。 贔屓にしている肉屋さんも、実はカラスに給餌しているらしい。この店では、肉は量り売りで、経木に包んでくれる。贔屓とはいえ、専門の山形牛など買える身分ではないが、スーパーとは違う専門店のプライドを感じる店を好ましく思っている。 この店の前にも時々カラスがいて、白衣の店員が出てきて余り物を待っている。
酒田のカラスが比較的人間と友好的なのは、ねぐらが町から離れた松林だからだろう。例えば隣接する鶴岡では、城跡の鶴岡公園がねぐらで、そこを追い出されると今度は近くの総合病院のビルとその周辺をねぐらにした。糞や騒音、そしてなにより集団でいるだけで人に与える脅威のため、こちらでは評判がかんばしくないのだ。 酒田では、夜になれば彼らがねぐらに帰って行くので、いわゆるソシアルディスタンスが保たれているということなのかもしれない。
酒田にはスズメも多い。近年スズメが激減しているという話を聞くが、ここでは町にも森にもスズメがにぎやかに暮らしている。 自宅の向かいにある、空き家時々貸し家の屋根では、毎年スズメの一族が営巣する。自宅前の電線では、彼らがおしゃべりし、愛の歌を歌い、公然と交尾するし、その隣の資材置き場の砂山は、彼らの公認砂浴び場になっている。 近所には、早朝、スズメやヤマバトに食べ物を与えるおばあさんがいるし、他にも数軒、スズメを養っているらしい家がある。たまに、スズメの集団が家の戸口に体当たりしておねだりしている姿がある。感謝するより、たまにもらえない日には不平を表すのが、いかにも動物らしいかな?
観光客に来てほしいというのが酒田市の願いらしいのだが、これといった目玉がない。酒田ラーメンがあるじゃないという人もいるが、ラーメンごときででわざわざ行ってみる気にはならないだろう。新幹線が通れば来る? いやいや、山形新幹線の終点の新庄など、乗客はだれも降りて来ないよ。 ぼくは「星降る街、酒田」など良いと思うのだが、照明をこれ以上暗くすることには賛成がもらえないだろうし。そこで「カラスとスズメにやさしい街」とか「風が棲む街にはリスも棲む」なんていいなあと思うのだが。 もっとも、タイワンリスの害で閉口している湘南や横浜の人など、リスと聞いただけで耳をふさいでしまうかな?
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