雪が積もった林床では動物たちの足跡が見られる。人家も近い街中の森にもかかわらず、キツネやタヌキが夜中、あるいは明け方に、食べ物を求めてうろついたのだろう。
最近はテンも棲みついたらしく、黄色い冬毛のテンを一度だけ見たことがある。テンの足跡は左右のものらしい2つが重なるように残るのだが、その2つがやや斜めにずれているのが特徴だ。胴長の彼らは身体を斜めにして走るのだろうか?
リスは気まぐれなのか、足跡が見つからない日も多い。食いだめしてねぐらで眠りこけているのだろうか? しかし、別の日にはあちこちでたくさん見つかる。時には、複数の足跡が乱れるように残っていて、何が起こったのかと気になる。
その乱れた足跡の謎が解けたらしい。
暖冬の影響なのだろう。2月になると、雪がなくなってしまった。たまに降っても積もらないかすぐに消えてしまうのだ。足跡を見つけて想像する楽しみは今年はお預けだなと、思っていたら、昨日の朝、こんなことが起こった。
行く手の松の木に2匹のリスがいた。例によって、追いかけっこするように螺旋を描いて上り下りしている。それから木を下りてきて前方に走った。
カメラを抱えて速足で追う。リスは藪に入って行った。藪の前で立ち止まり、気配をうかがう。これはもうハンターと同じ気分だ。
しかし一向に気配がない。動けば音でわかるはずなのに、音を消しているのだ。
すぐ近くでシジュウカラがしきりに鳴く。よく聞く鳴き方ではないが、なにを告げているのかわからない。人がいるぞとリスに伝えているのか?
5分ぐらいたつと、藪のすぐ近くでがさがさ音がし始め、リスの姿が見え隠れした。走り回っている。時々藪から飛び出してきて、あわててまた藪に飛び込んでいく。数が増えているようだ。音が遠ざかっていくが、小鳥が鳴きたてているような声もする。鳥たちが興奮しているのだろうか。
少し離れた木に数匹のリスがとりついて枝を飛び移り、木を降りて別の藪に入った。それでわかったのだが、小鳥のような声はリスの声だった。しかし、時々聞くリスの声ではない。興奮した子ども(ヒトでもサルでも、その他の動物でも)が騒いでいるような感じと言ったらいいか。
藪の中で姿はほとんど見えないのだが、リスの集団の騒ぎは1本の木を回ったり、別の方向に走ったり、時々藪から飛び出してきたり、そして「いけね、人間だ!」という感じでまた藪に飛び込んだり。
検索すると、リス(ニホンリス、キタリスの亜種)の発情期は冬で、春に出産するという。実際、巣から出ることを許されたリスの新生児を見るのは5月初めぐらいだ。
リスの婚活パーティーは、雄と雌が出会い、追いかけっこして結ばれるのだと想像していたのだが、実はこんなエリアの大人のリス全員が参加しているかもしれないような大集会もあるのかと、驚いてしまったのだった。
秩父の夜祭り、東京の府中は大國魂神社の暗闇祭りのルーツにもつながる古代日本におけるアズマ(東国)の歌垣(かがいと読むらしい)の祭りもかくや。
ところで、集団になったリスの群れは、興奮したさえずりと共に、どんどん遠ざかっていってしまった。
写真は? 一枚も撮れなかった。残念!
掲載した写真は、まだ若いからか、エリアから遠くて知らせ?が届かなかったからか、散歩の終わりに出会った、ぽつんとひとりクルミを食べていた1匹。