マッシュルームさま、冷遇いたしましたこと、つつしんでお詫びいたします!
昔、某乗馬クラブに居候していた時のことです。 尾籠な話でもうしわけありませんが、クラブには馬がいるわけだから当然排泄物が出ます。糞尿で汚れて馬房の敷き藁とともに厩舎の裏などに積んでおくことになります。これを厩肥と呼ぶのですが、時々、近所の農家が軽トラで乗りつけ、この厩肥を積んでいきました。有機肥料として、田んぼの優秀な肥やしになるのだそうです。代わりに農家が稲藁を届けてくれました。藁は当時もすでに貴重品で、敷き藁に使ったり、押切りで細かく切って飼葉に混ぜたりしていました。配合飼料と乾草のキューブだけじゃ、かわいそうだというので。 というわけで厩肥は有機肥料ですが、ここの厩肥は配合飼料だけでなく藁や青草由来のものも含む、いわば有機厩肥というようなものだったのでしょう。 ある時、厩肥の山の一角に白いキノコが生えているのを見ました。 師匠のYさんに「マッシュルームみたいですね。」と言うと、ニヤニヤして 「そうだ、あれはマッシュルームだ。持って帰るか?」との答え。 マッシュルームは、もともと厩肥に生えるキノコなのだそうです。 ぼくはキノコが好きで、それまではシチュウ類を作る時には必ずマッシュルームを入れていたのですが、それ以来やめてしまいました。買ってきたマッシュルームの根本についている黒い土を厩肥だと思い込んでしまったのです。 それは大きなまちがいでした。たしかにかつては厩肥を使ってマッシュルームを栽培していたのですが、今では厩肥はほとんど使われていないそうです。これだけ菌床栽培の技術が進んでいるのだから、そりゃそうでしょうとも。 今の季節、地元のスーパーの産直コーナーなどに、マッシュルームが山のように積まれていて、とても安い。たいていホワイトとブラウンが混ざった袋詰めです。大きさがそろわないとか、成長しすぎたとかで、正規の流通ルートに乗せられないものなのでしょうか。それを買ってきて洗ってから(キノコは洗う必要がない、洗うと味が落ちると言われますが、マッシュルームはやはり洗った方が安心な気がします)、半分に切って冷凍しておき、必要なときにそれをそのままか、薄切りにして使うのです。 最近すばらしい発見をしました。料理の世界では常識だったのかもしれないのですが、知らなかったのです。冷凍マッシュルームを使った料理は、とても良い香りと旨味が出るがということを。冷凍したことで細胞膜がこわれるとかそういう理由でしょうか。「マッシュルームの旨味」というものを実感したことがなく、テレビなどは大げさに言っているのだと思っていたのですが、これがそうなのかもしれません。ともかくお試しあれ。
|