奇妙な名に出会いました。シンジュキノカワガといいます。
これがそれ。「真珠・紀の川・蛾」、素直に変換するとそうなるし、そうかな?と思いますよね。それにしても真珠に紀の川?
数数年前に見つけました。というより、ある木に大発生しその木を丸坊主にしました。その木は一見ウルシ科のハゼノキのような木で、森の管理上毎年定期的に行う除草作業で必ず伐採されてしまいます。でも、すぐに芽を出し、翌年には前年と同じ3メートルくらいの高さになり、前年より株数が増えているありさまです。
それにしても毛虫は苦手なうえ、黄色に黒の虎縞模様のこんな毛虫は見たことがありません。
でも気にはなっていたのです。それで思い切ってネット検索しました。するとすぐにヒット。シンジュキノカワガだというのです。名前の由来は、この毛虫、つまり蛾はシンジュ(神樹)、別名ニワウルシという木の葉を食べる。ウルシ科に見えるけれど漆のような毒性はないので庭に植えても大丈夫な木だそうです。
この木は中国から移入された木だそうで、ぼくは別のことで名前を知っていました。
鎌倉に遠足に行った後で、生徒が作った壁新聞に大きな蛾の写真があったのです。それは世界最大の蛾、ヨナグニサンのようでした。広げた前翅の上端が丸く突き出ていて眼状紋があります。そして、その目玉模様を持つヘビの姿が描かれているように見えるのです。台湾に近い与那国島の蛾が鎌倉にいたら大ニュースです。
数日後、学区を歩いていたら、路上に偶然同じ蛾が落ちていて、ハタハタと動いていたのでした。冷静に調べると、確かに巨大な蛾ですが、ヨナグニサンほどではなく、持ち帰って図鑑を調べると、シンジュサンという蛾だとわかりました。ヘビのような模様もあるのですが、三日月型の模様も目立ちます。それでミツキムシと呼ばれていたと。ニワウルシは明治時代に中国から移入されたそうで、「神樹」と呼ばれ、この蛾もシンジュサンと呼ばれたのだと思います。シンジュサンからワイルドシルクを採ろうとしたのかもしれません。
シンジュキノカワガは、この木と共に日本に入ってきたのかもしれません。
そうそう、キノカワの名前の謎が残っていましたが、これもネットで判明。この毛虫がサナギになるとき、忍者のように姿を隠すのです。
「紀の川」かと思ったら「木の皮」だったというわけ。つまり「真珠・紀の川・蛾」ではなくて、「神樹・木の皮・蛾」だったというわけ。
ぼくも探してみたのですが、始めは見つからず、「まだ繭にはなっていない」と思ったのですが、目を凝らすと、木の幹というよりまだ細い茎が、ところどころふくらんでいます。一つはぎとってみると、確かにサナギが、いやまだ脱皮する前の前蛹体の幼虫が入っていました。完全な擬態。忍者も海兵隊もびっくりです。
ネットで見ると、蛾もおもしろいのです。翅を広げると、鮮やかな青と黄色、ウクライナの国旗のような色彩でした。(詳しくはウェブでどうぞ。)