早稲田大学春秋会 新春の集い
平成27年2月7日(土)
大隈会館301・302号室
大津波という自然の猛威と原発の炉心溶融という人間か作り出した猛威の両方を同時に被ってしまった東日本。この大震災の復興は政府が責任を持って処理しなければ成らないことは当然であるが、東京電力を悪者に仕立てるだけでは何も解決しない。そればかりにかまけ、震災という夜陰に乗じて、すきを伺う国際的火事場泥棒に睨みを利かせてこそ日本政府である。世界の人々は大津波の燦燦たる光景に驚愕し、『日本人なら必ず復興させる』と、奇跡とまで言われた戦後復興を例証し“技術王国を作り上げた日本は、いや日本国民は、この震災から必ず立ち上がる”とエールを送ってくれた。『日本がんばれ!』と。しかし数日後の福島第1原発の原子炉建屋の無残な光景と、放射能汚染水を海へ放出のニュースを知った世界の人々は、日本非難へと変かっていった。我が国が、世界一の科学王国と謳われ、卓越した“電力政策”が優れた工業製品を生み出しその利益で電力を作るための燃料資源を輸入し、その燃料資源が列強の覇権主義や政情不安で人手困難になる中で、輸入資源に頼らない原発こそが、日本の発展には欠かせないと考えた。そして昨日まで、この政策が我が国の燃料資源の海外依存度を減らし、かつC02をも減らす、ばら色のシナリオとして将来の日本を導いて行く筈たった。ところが如何だろう。
2030年までにCO2 25%削減すると宣言し、原発を強く推進した政府が、手の裏を返すように、東京電力だけを悪者にし、原発が稼勤しない分を化石燃料の輸入を推進し、かっこよく、世界に向かって宣言したC02 25‰削減も震災を理由にほごにするらしい。これでは元の木阿弥、国際的信用も丸潰れである。
我が国の奇跡的な戦後復興は、一にも二にも『電力政策』の成功である。エネルギー資源も、金属資源乱最近は食料までも全て輸入に頼り、平和外交ならぬ屈辱外交に終始しながらも、輸入と輸出のバランスを上手く探りながら輸出超過を維持してきた。辛抱強い努力家日本人の存在そのものであった。そして、かくならねばならなかった理由は“エネルギー資源”が乏しいからに他ならなかった。将来においても、自前のエネルギー資源を産み出さない限り、日本は、発言力を持った国には、決して成れない。
そこで本書では、明治からこれまでの、日本のエネルギー政策の並々ならぬ努力を“電力”供給の側面から眺め、さらに、近い将来、自前の資源から新しいエネルギーを創成する、化石燃料や核燃料に頼らない“再生可能な水素エネルギー社会”を作るまでのシナリ才を述べることにする。
【講師略歴】1939年生まれ。早稲田大学理工学部資源工学科、同理工学研究科博士課程修了後、私立栄光学園講師、東海大学工学部電気工学科教授等を経て、2005年4月より東海大学名誉教授、同年9月より東京工業大学特任教授。通産省工業技術院科学開発プロジェクト・先端機能創出加工技術(ACTA)評価委員などを歴任。
【著書】2011年『再生可能エネルギーを考える≪原発に有終の美を≫ルベワー社出版ふ2007年『“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え≪風力発電による海洋資源回収と洋上基地≫ルベワー社出版』、1986年『エキシマレーザー最先端応用技術/CMC出版』他多数。