私が薦めるこの一冊「へんな生きもの へんな生きざま」
写真集のような本ですから、図書館から借りることを勧めます。 もちろん著者は「へんな生きもの」の早川いくを。シリーズの総集編ともいうべき一冊です。 「へんな生きもの」を読まれたかたは、あの本に結論があるとしたら、この世でいちばん変な生きものは人間であるということではないかと感じたことでしょう。タイトルだけ見て敬遠したかたはまことに残念。たしかに奇妙な生物のイラストがこれでもかと続くのですが、実は添えられた文章が秀逸です。なかでも、図とは無関係なコラムで、当時のニュース「アゴヒゲアザラシのたまちゃん騒動」の顛末など、抱腹絶倒ものです。早川氏にその意図があったかどうかはともかく、人間とはなんとおかしな生きものかとしみじみ思った次第です。
しかし、今回お薦めする「へんな生きもの へんな生きざま」は、「人間がどんなに変であっても、こいつらにはかなわないなあ、やはりどうしても人間は自然にはかなわねえや」ということを実感する本です。 なにより写真がすごい。図ではどうしても図鑑と同じで、生きものが標本のようにみ見えるのですが、おそらくネットで収集したであろう写真(画像)は、どれもその生き物のある一瞬をとらえたものですから迫力満点。こんな人形を作る人がいたなあと思わせるヨウカイカマキリだの、ヒーローものや戦隊ものの悪役に出てきそうな「ニセハナマオウカマキリ」など、ほんとにこんな生き物がいるのかいと眉につばをつけたくなるようなものばかり。 しかし、一番笑えたのは、トビネズミに始まるトビ◯◯の連続攻撃。トビネズミは跳ぶネズミなのに、それをむりやりトビトカゲ、つまり飛ぶトカゲにつなげ、空への憧れがトカゲに翼を与えたと続きます。次のページは「トカゲに続けとばかりにヤモリが飛び始めた。」と。2匹の空飛ぶヤモリがいたずら小僧のように大口をあけ喜々とした表情で(まぶたもないヤモリに表情があるのかって?あるんだなこれが。)。 次はトビガエル、「負けじとカエルも飛ぶ」。「ばーか。ヘビのば-か。悔しかったら飛んでみな!」と叫びながら。 ご想像の通り、次はトビヘビ。「ヘビを怒らせてはいけない。」と。そして最後は「もう何が飛んだって不思議はない」とイカが飛びます。トビイカだそうです。
こんな愉快な本があっていいのか?もちろん良いに決まっています。なにしろ大の男が「私は虫がにがてなので」なんて堂々と言える情けない世の中です。昔なら口が裂けてもそんなことは言えなかったのに。虫が苦手というだけで弱虫という虫の仲間に入れられたり、背中に虫を投げ込まれたりするくらいだったのですから。 子どもたちが、リアルな世界ってゲームよりおもしろいと感じてくれたら嬉しい限りです。 まあ、年金生活者にとっては買うには高価すぎるし、飾っておく場所もないから、図書館利用がお薦めなのですが。
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