山の紅葉はもうピークを過ぎたようです。でも、落葉したブナというのもなかなか風情があるのです。
そこでブナの森にいだかれた鶴間池へ、今年最後かもしれないトレッキングへ出かけました。
鳥海南麓の大台野から滝の小屋まで続く林道の途中に駐車して、森に分け入ります。いきなり下りのコース。それから沢をいくつか渡るのですが、深く浸食されている谷もあり、ロープで登り降りする場所があります。
ほとんど裸になったブナ林は明るく、所々に赤や黄色に葉を染めた灌木が見られます。そんな仲に、なんとヤマアジサイの花が残っていました。
昔、ブナは良質の材木にならないとされ、薪や炭にされたそうです。そのころの炭焼き窯が遺跡として残っています。石を積んだ窯です。
見えてきた鶴間池小屋、無人の避難小屋です。
40年も前、一人でこの小屋に泊まったことがあります。当時の小屋は湿っぽく、しかも池から流れ出す渓流の音と風の音、そして屋根にブナの実が落ちる音で眠れず、その音の中にしきりに人の話し声が聞こえるような気がして、恐怖の一夜でした。なにしろ聞こえる声は、意味は聴き取れないのに庄内弁らしいことは分かる。山刀を握ったまま横になっていました。
その小屋は、台風で倒れたブナの木に押しつぶされて倒壊し、今の小屋は新しく建てなおされたものです。泊まったことはないけれど、快適そうです。ストーブもあり、常備されている非常用食糧や燃料は山岳会などが常に補給しているのです。(山岳会の地味なボランティア活動には頭が下がります。彼らが要所要所につけてくれるピンクのリボンを辿らなければ、まちがいなく迷って遭難してしまうでしょう。
ところで、今年はブナの実が10年ぶりの豊作だそうです。ブナが実らないと、熊が飢えて人里に降りてきて作物を荒らしたりするそうです。
これがブナの実。先日、林道で拾ったものよりひとまわり大きいので驚きました。
殻をむけばビールのつまみにもなるし、ご飯に炊き込むのもよいとか。でも熊のためには乱獲は禁止ですよね。
さて、昼食後は池の景色を堪能して、同じコースを辿って帰りました。
ブナは英語でホワイトオークというそうです。材が白いからですが、幹や梢も白く、霧氷のように見えます。この写真、東山魁夷の絵のように見えませんか?
お馴染みのオオカメノキの冬芽も、たくさん見つけました。ウサギのようにも見えるし、あらエッサッサ-と踊り始めたようにも見えたり?