この落ち葉、何という木の葉だろうかと気になっていました。隣の赤い葉が桜ですから、かなり大きな葉だとわかりますか。もっと大きなものもあります。クワにも似ています。でも、幹には縦のすじがあって、クワとはちがいます。これが菩提樹とわかったのは今年の夏ごろのこと。
おおかたの春の花が終わったころ、頭上でワーンという蜂の羽音。蜂が集まるアカシアももう終わってるしと思って見ると、高いところで白い花が群がって咲いている枝があります。アカシアに似た石鹸のような香りもします。それがこの木でした。散歩コースのこのあたりにだけ数本生えています。
図鑑などを調べると、シナノキが似ています。でも、シナノキはカツラに似たハート型の葉のはず。こんな大きな葉ではありません。
結局、同じシナノキ科のオオバボダイジュとわかりました。菩提樹といえば釈迦がその下で悟りを開いたという木。でもそれはクワ科のインドボダイジュだそうです。シナノキ科の菩提樹というのは、ヨーロッパの菩提樹(リンデンバウム)の一族なのだそうです。
シューベルトの「菩提樹」。葉擦れの音を想像させるピアノの前奏の三連符を思い出します。あの菩提樹の親戚がこれなのか!
もう一つ思い出したのが、宮沢賢治の作品にたびたび出てくる菩提樹皮(マダカ)という言葉です。これは岩手の言葉で、菩提樹やシナノキの樹皮から作った繊維のことだそうです。絹や木綿が手に入らない山の人々が身につけた衣服の素材です。
ちなみに、山形県鶴岡市の温海(あつみ)地区では、今でもシナノキの繊維を追った布(シナブといいます)を生産しています。
思い出したついでに、長野県の旧名信濃の国のシナとはこのシナノキのことで、長野にはシナのつく地名がたくさんあります。(豊科、蓼科など)シナが採れる土地ということなのでしょうか。
また、鬼怒川のキヌとは絹のことだし、群馬県の旧名上野(こうづけ)はかみつけの=上の絹、けのとはきぬが訛ったのだとか。栃木県の旧名下野(しもつけ)はしもつけの=下の絹、つまりどちらも絹の国ということです。つまり、関東北部は古来絹の産地だった」ということです。
木材の産地が木の国(紀の国=和歌山)。じゃあムサシとは?今住んでいるデワ、またはイデハの国とは?
はてさて?散歩しながら、疑問が次々に湧いてきます。