時々、実家の畑で採れた野菜を届けてくれる友人から、こんな大根をいただきました。
こんな大根は首都圏のスーパーでは売らないでしょう。東北では「まっか大根」「まっかんだいこ」などと呼ばれています。枝分かれした棒などを「まっか」と呼ぶ地方もありますから、枝分かれした大根の意味だと思います。実は、庄内では12月になると、まっか大根が大人気なのです。
12月9日、庄内の商家などでは「大黒様の御歳夜=おとしや」という行事があります。床の間に大黒天の置物を飾り、料理を供えるのですが、そこに必ず備えられるのがこの「まっか大根」です。
その由来については、大黒様(大国様)が旅先で腹痛を起こした時、長者の嫁が大根を食べさせて治したことに由来するという話も伝わっているのですが、この行事の別名を「大黒様の嫁迎え」とも言われていることから、この大根は女性を象徴したものだと考えられます。
見れば見るほどエロチックでしょう?
ところで、民謡「最上川舟唄」にこんな歌詞があります。
〽酒田さ行ぐさげ 達者(まめ)でろちゃ
流行り風邪などひがねよに
酒田今町 鳴いて通るカラス
銭も持たずにカオウ(買おう)カオウと
清水脩作曲の男声合唱曲「最上川船歌」にも同じ歌詞があり、船頭が家に残る妻に「留守の間、達者でな」と言い残して下る歌だと思っていました。しかし、「今町」が昔は色街だったと知るにつけ、これは酒田の馴染みの遊女に「俺が行くから達者で待ってろ」という意味なのだと悟りました。
すると、今までは意味不明だった正調の有名な囃子ことば「まっかんだいこのしょっちる煮(塩汁煮)、塩がしょぱくて食らわんねちゃ」も、一仕事終えて盛り上がっている船頭たちの、危ない歌なのだと推測できます。「しょっぱい」とは何のことかと。
そういえば、酒田の裏歴史に「相馬屋不敬事件」というのがあるそうです。相馬屋とは、酒田舞子で売り出している料亭「相馬楼」が、昔遊郭だった時の名前です。
明治のはじめ頃、酒田の名士(多くは大商人)が集まって新年会をしたのですが、そのとき酔狂で雛人形をまねたというのです。今で言う「コスプレ」でしょうか。これが、皇室をまねて宴会をしたという不敬罪に問われたという「事件」です。きっと、当人はキョトンとしたことでしょう。菊の花も「ご紋章の菊を食べるとは、もってのほかだの」なんて笑いながら食べてしまうほど、無神経ではあっても、悪気もなにもないのですから。
こんなエロティシズムやユーモア感覚に、東北の文化を感じます。
例の大根を裏返したら、なんと男の子でした。へそ曲がりではないのですが、曲がっているものが???