庄内平野は昔、湿地だったそうです。海岸が巨大な砂丘であるため、いわゆる後背湿地となり、水はけが良くないためでしょう。そこに水路を掘ったり、ため池を作って排水し、水を管理するようにした。鶴岡市大山地区の上池、下池もそのようなため池のようです。(池と呼ぶには大きく、貯水池と呼びたくなるのですが。)昔は冬は凍結していたそうですが、暖冬で凍らなくなり、冬鳥が越冬に来るようになって、ラムサール条約登録のはこびとなったようです。
そして、この2つの池をの周囲や後ろの丘陵は、植物相が豊で、特にスプリングエフェメラルと呼ばれるような春の花が一斉に咲くさまは見事です。しかも、きつい登りなしで気軽に行ける。去年は仙台ナンバーの観光バスが乗りつけているのを見ました。
余談ですが、大山地区が江戸時代は天領だったのは、水利権を抑えるためだったのではないでしょうか。地下水にも恵まれ、日本酒の蔵がいくつかあり、新潟地震のときはこの井戸を開放したそうです。
日当たりの関係か、春の開花はまず上池周辺で始まり、下池に移り、丘陵を登っていく。丘の一つが高館山で、古い山城の跡でもあります。
先週、上池の花を堪能したので、昨日は下池側を訪ねてみました。山形県では雪割草とも呼ばれるミスミソウ(オオミスミソウ)が咲き始めていました。
ワスレナグサの仲間であるルリソウ、イワカガミの仲間のイワウチワも。
もちろん、カタクリ、キクザキイチゲも道端にあふれ、遅咲きのシラネアオイも咲き始めていました。
カタクリが咲けばギフチョウが飛びます。1年に一度、この季節にだけ羽化してくる春の女王というわけです。
向こうから赤いチョウが飛んできたのでカメラを構えると、とまったとたんい消えてしまい……、おや、先週もこんなことを書きました。あれはツマキチョウだったのですが……。このチョウも枯葉に化けています。でもツマキチョウよりもっと枯葉に似ています。なにしろこの枯葉には柄まである、と思ったら、顔の前に長い角のようなものがあります。テングチョウです。角のような突起を天狗の鼻と見たのですね。写真では、長く見えるのは触覚ですが、平行して角があるのがわかるかと思います。
テングチョウ
表はオレンジ色なのですが。
ついでに近くにいたシジミチョウらしいのを撮ったら、これはコツバメらしい。
コツバメ
そしてギフチョウ。
以下、今回出会った花たちです。
ミスミソウ
ルリソウ
シュンラン
ショウジョウバカマ
シラネアオイ
花ではないのですが、カタクリの咲く季節に現れるおもしろいキノコガあります。
シロキツネノサカズキモドキというそうです。例のトゲアリトゲナシトゲトゲに匹敵する長い名前です。(生物の名前に~モドキやら~だましやらとつけるのは、その生物に失礼だとぼくは思うのですが。でも、春の日差しを浴びて、林床に積もった落ち葉が乾いたところに、ポツリと見える赤。キノコの陰気さを感じさせない春のキャラクターです。
次の写真は、ルリソウにやってきたビロードツリアブ。くびれのない楕円形の体に小さなストローのような口。全体を覆うビロード状の毛。いわゆるモフモフ系の小さな昆虫です。
でも、最近ネットで話題になっているトラツリアブの可愛さには負けてしまいます。ぜひ検索してみてください。ぼくも一度、実物に出会いたいものです。
PS:庄内地方、きのうソメイヨシノの開花が発表されました。指標の桜が1輪咲いたそうです。数輪でなく。測候所が無人化され、発表するのは市の職員。週末に賑わってほしい経済的事情があるのでしょう。